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2011年5月 4日 (水)

日本の写し鏡として見る「よみがえれ!夢の国アイスランド」

よみがえれ!夢の国アイスランド―世界を救うアイデアがここから生まれる (地球の未来を考える)
アンドリ・S. マグナソン
日本放送出版協会
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地熱発電など、自然環境との共存のイメージが強い
アイスランド。

しかし本書に描かれているアイスランドの姿は
かなりショッキングなものだった。

本書では、アイスランド政府と国営電力会社が
国民に断わりもなく、豊かな自然を破壊し、
水力発電のための施設を建設してしまったこと、

そしてそこで得られる電力を
「世界一安価なエネルギー」として大企業に
売り出してしまったことを告発している。

本書の出版は2006年。
そのおよそ2年後の2008年に、アイスランドの
バブル経済がはじけ、金融崩壊が起こるのだが
すでにその萌芽が本文内に描かれている。

*     *     *

本書の日本の読者に向けた前書きの中で
筆者はこのように述べる。

アイスランドの経済崩壊の原因は煎じつめれば、
(中略)
昔ソ連で行われていたような大規模な五カ年計画だ。
国内の電力生産を倍増するという
この大胆な計画の目的は、ある米国企業が所有する
アルミ精錬所に電力を供給することにあった。

そもそも、自然を破壊して得られた電力は
アイスランドの全家庭が必要とする電力需要を
超えたものだった。

なぜ政府は、わざわざ自然を破壊してまで
電力を生み出し、そして過剰な電力を使うために
アルミ精錬所を建てなくてはいけなかったのか?

それは、発電所や工場を建設するときに
莫大な資金が動くからだ。
一言でいえば「経済成長」のためであった。

「経済成長」という言葉は、
一見して、とても良いことのように思える。
しかし、
「経済成長とはどういうことか?」
「お金以外に重要な価値はないのか?」
「今のままではダメなのか?」
といったことが、振り返られなかった。

ただ人々は一心不乱に「経済成長」
のために邁進し、その結果
アイスランドの貴重な自然は失われ
マネーゲームに巨額の資金が投じられて
バブル崩壊が起きた。

*     *     *

このような状況は、日本の置かれている
「震災後」の状況と比較して読むと興味深い。

原発がなぜ積極的に作られていったのか
供給のバランスが崩れた今、電力をどうするのか。
また、少なからず日本も加担していた
マネー上位の価値観に変わるものはないのか。

今の危機的な状況に、僕をはじめとして
日本国民は加担しているはずである。

少なくとも、原発が次々と建てられることを
「是」としてきた価値観を疑わなかった点で、
本書で述べられている
「反対する声を持たなかったアイスランド国民」
と姿を同じくするではないか?。

日本がどのような道を見いだすかは、いかに
本書のような「似た事例」=考える手がかり
を多く得るかにまずかかっていると
僕は考えるものである。

本書はこのようにも述べている。

景気後退のおかげで人々は、真に価値あるものを
思い出した。
アイスランド最高の頭脳と思われていた人々が
己の国をまさに破産させてしまった今、
教育の価値とは何なのかを人々は問い直し
はじめたのだ。

はたして日本は、同じように胸を張って
「良い方向に変わりつつある」と言えるように
なるだろうか?

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コーヒーは出しませんが、楽しい読みものをサーブ。
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